空間研究所／篠原聡子

東京都心の住宅地には敷地境界を挟む空地など、細分化された空地がたくさんある。この小さな長屋を計画するにあたって、それらは活用すべき重要なストックであると思えた。相手の小さなvoidに対して、こちらもへこませればそれなりに採光や通風にとって有効なvoidになる。敷地の周辺の空地を読み込んだ結果、うねった路地状のvoidが決定された。

合体されたvoidは単にこの計画にとって有効であるばかりか、ささやかながら細分化された住宅地の景観に貢献することになる。特に旗竿敷地の道路への取り付き部分と併せたvoidは、狭小な道路に対してかなりゆとりを感じさせる空間を提供することになった。

周辺には通常の戸建て住宅群の中に片廊下型のアパートが散在している。これらは片廊下という無味乾燥な建築的装置によって、サイトと無縁に存在している、敷地が狭く集合住宅として有効な共有空間を建築的に用意できないため、長屋という接地型の集合形式を採用することで、voidの複合と共に、小さな集合住宅という建築がこの場所に連続的に存在することを試みている。

居住者のアクティビティもまた場所との連続性という意味では重要な一要件である。住戸のプライバシーという基本的な要件を満たすために縦方向にできるだけボリュームをとり、バスルームや寝室といったプライバシーを必要とする空間を階上に上げ、接地階にはエントランス、キッチン、リビングなどを他者に対して開ける可能性ある空間を、うねった路地状のvoidに対してかなりオープンに配している。

4軒の小さな長屋の計画だが、実はこの規模の集合住宅は決して少なく、その多くはこうした住宅地の中にある。戸建て群の中に、こうした賃貸の集合住宅がさまざまな意味で連続的にあるための試みとなったと考えている。