竹内医院
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- 千葉県富津市, Japan
- Anno
- 2010
診療所は、今や数少ない地域に密着した建築である。そこは同じく地域施設である小学校や中学校より、ある意味で開かれた施設とも言える。開院時間内であれば、誰でも入ることができるし、年齢も性別もさまざまである。したがって、誰がふらりとやってきても、アクセスしやすく、内部の構成が明快であることが求められる。
竹内医院は単純な矩形の箱にシナ合板で覆われたコアを挿入し、挿入したボリュームから内部の通路へと光を落とす構成が、待合室、診察室、そして、診察を受けた後それぞれの目的に沿っていく内視鏡室、X線室、CT室、リハビリルームへの順路を患者に明確に指し示している。また、2層に吹き抜けた内部の回廊は、そこを患者として通過する人びとのために、単に順路を明示するだけでなく、空に向かって開放的な空間となっている。
しかしまた、診療所は暫しの居場所となる建築でもある。かつての竹内医院では、具合の悪くなった患者は、自分の布団を持ち込んで小上がりで寝て診察の順番を待っていたという。そうしたエピソードからも、地域の診療所が人びとにとって生活空間の一部、暫しの居場所となっていた様子が窺える。
大きな片流れのボリュームに挿入された小さな矩形の中には、少し横になれる畳の小上がり、キッズコーナー、授乳室、点滴室など、小さく落ち着いた空間が挿入されており、5.6mの天井高の待合室や回廊とは異なる、住宅のスケールを持つ空間となっている。ファサードもまた表通りに背の高い構えをつくり、診療所としての開かれた表情を持ち、住宅が近接する狭い通り側は低い軒高として周辺の家並みに同調するようなスケールとした。建物は新しくなり、面積が大きくなっても、そこが地域の人びとにとって生活空間の一部であり続けるために、開かれた建築であることと、住宅の質を持つこと、竹内医院は、そのふたつの質の両立を目指した建築である。