C4L
プロジェクト一覧に戻る- 場所
- 東京都世田谷区, 日本
- 年
- 2022
日本では、古くは庭と室内を繋ぐ深い軒の奥には、深く薄暗い部屋があり、そこから明るい庭を眺める、夜は行燈の光で過ごす。そんな空間で人々の生活は永く続いてきた。
谷崎潤一郎の“陰翳礼賛”で語られる、薄暗い中でこそ美しく心地よく感じる素材や設え。そして、庭屋一如と言われる外と中との関係。その伝統と私たち日本人が自ずと持つ感性を、そして手仕事の温もりを感じられる素材や設えを多用することが、真に心休まる場所の創出に繋がる。
このプロジェクトでは、そのような日本人が古来より持っている感性・感覚を最大限に表現したいと思った。日本文化を改めつつ様々なカルチャーを融合させ、心地よい居住空間を目指して設計をした。明暗のコントラストを強く意識し、弱い光の美しさを表現する落ち着いた空間と、強い光が落ちる活動的な空間を明確に分離しつつ、光の美しさを追求し艶のある空気感としている。
自然界から供給される土や木が日本の伝統職人により、様々な建築表現となり、そこに美しい光を落とし込むことでより深みのある空間となる。このプロジェクトでは日本の伝統職人作家、数寄屋・左官・和紙・組子・組紐・建具・漆塗りの7名との協働が命題となっており、各々の強いキャラクターを一つのものに昇華させていくことは容易ではなかったが、独特の空気感を纏う空間となった。
日本が継承すべき紡ぐべき家とは、日本文化の背景を理解し、先人の技術や工夫に敬意を現しながら次なる世代に渡していける家なのではないかと思う。そういったコンセプトが凝縮されつつ和のラグジュアリーを提案している。
世界で活躍する職人とのコラボレーションは膨大な労力を要したもののとても刺激的なものだった。
日本文化の真骨頂である、静謐で繊細な緊張感のある空間でありながら、そこはかとなく美しい日本の侘びと寂を感じる世界観も実現できたのでなないかと思う。