写真 © Yasuhiro Nakayama
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ミキハウス

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場所
神奈川県厚木市, 日本
2019

敷地は都心から少し離れた丘陵地にあり、なだらかな起伏に沿って雛壇造成された住宅地の風景が広がっている。住まい手は夫婦と子供2人。絵画制作、勉強、遊び、食事、就寝などの行為に応じた場が敷地いっぱいに広がっているような状態が求められた。また戸建住宅地という環境において、周囲に開け広げな建ち方ではなく、適切な開き方と距離感を持つことがここでのマナーであるように感じた。

高低差のある敷地に対し、前面道路から敷地の奥に向かって緩やかに段状の床を連続させた。各床は、道路や庭との繋がり、他の床との高低差、天井高さ、家具の納まりなど、場ごとに適したスケールを調整することで定められている。
例えば、道路側の最も低いレベルにある床は、天井高さを確保し上部に窓を設けることで採光し、通りに対しては閉じた半地下のような空間である。またその窓は、敷地奥の段々に上がった床レベルから見ると目線の高さになり、向かいの住宅の緑を望むことができる。
上階では目線よりやや上に窓を設けることで、近景を超えて遠くの住宅地まで視線が抜けていく。
段状の床は最上部では開放的な屋上テラスとなるが、敷地奥に位置するため通りからの目線が気にならない程度の距離感を保っている。
それぞれの床や窓が多様な関係性を持ちながら連続することで、どこにいても全体への広がりを感じられ、更に敷地を超えて周辺環境へまでもつながっていくようなおおらかな空間となった。
地形との関係を連続的に捉えることが、周辺環境の多様性を顕在化し、この場所でしかできない建築になったのではないかと思う。

住み始めて少し経ち、家族それぞれが自分の場を見つけ、創造的に空間を使い始めている。窓の向こうの公園の緑や隣家の屋根が切り取られて見える席で食事をする。床の段差に座って窓からの明かりで本を読む。坂道や階段を登って帰宅すると、周辺の住宅地と建物が自然と繋がっているような開放的な経験をする。住みながら使い続けていくことで、より創造的な建築になっていくことをイメージしている。

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