NKS2 architects

熊本市中心部を流れる坪井川沿いの比較的広い敷地に建つ4人家族のための住宅である。まわりにはまだ田園風景も残る低密度な住宅地だが、近年頻発する豪雨の際には川が氾濫することもあり、敷地自体を1m近く持ち上げることになった。東西に長い敷地中央部に平屋の住宅を置き、東側の前面道路沿いを車庫、西側を庭とした。

家族が伸びやかに暮らすために、室内空間は一体感を保ちながら分節してゆくことを考えた。平面全体はほぼ正方形だが、その中に6角形を基本とした柱と梁のジオメトリーをはめ込んだ。このジオメトリーは空間を分節し、そこにはめ込まれた木製パネルが空間を仕切っている。

プライバシーを保ちながら室内の開放感を得るために、仮想的な天井レベルを3.7mに設定し、その中で必要に応じてもう一枚の中間天井を挿入した。この中間天井は空間のボリュームをコントロールすると同時にジオメトリーの中に様々な場所を作っている。

一辺約15mの建物の四周にはRCの壁がまわり、壁の中に埋め込まれたラーメン構造によって全ての水平剛性を確保した。屋根の鉛直力はすべて9mm厚の鉄板を加工した柱と梁で支ている。柱の形状がY字型になるため、板厚が薄くても座屈性能が確保できた。

屋根面にはトップライトを取り、室内全てに自然光が行き渡るようにしている。トップライト下には中間天井を設けて直射光が床面まで届きにくくしており、さらにこの天井裏を換気することで、熱の緩衝空間とした。

冬期の暖房は効率の高いルームエアコンを使って床下空間に暖気を直接送る方式を採用し、穏やかな床暖房としている。

6角形のジオメトリーで並ぶ細い柱と屋根から落ちる木漏れ日のような光環境によって、森の中のように自然環境と共生する空間を目指した。ここでの生活が、明るく自由な家庭を育んでゆくことを願っている。