森につづく棲
東京都世田谷区, 日本
国分寺崖線の河岸段丘崖に位置し、傾斜地で自然豊かな森(成城みつ池緑地)に三方囲まれた敷地である。西方向には富士山が望め、都心に程近い場所で緑に覆われながら眺望もある恵まれた場所での計画であった。傾斜地のため、一層目の半分は土に被りを受けるコンクリート壁式構造とし、外の恵まれた環境と生活空間が自然と繋がるよう、上2層は木造と鉄骨の軸組構造を主体として計画した。
森に隣接しながら、住宅街でもあるというのもこの場所の特徴であり、「開く」と「閉じる」の相反することを同時に行うことが必要であった。周辺の住宅からと前面道路からの視線を切りながら、自然環境に対しての抜けを確保できるよう、住空間を囲う腰壁の適性高さを探す作業から行った。その腰壁高さはフロアごとに下りと上がりの単純勾配とし、四角い平面の角を越える傾斜の稜線を描くことで、土地や建物の人為的な平面的方向性にズレを与えた。さらに重なる上下フロア、屋根のボリュームを揃えずズラすことで、腰壁によって強まる室内領域のエッジを弱めていった。
回遊しながら上階へと誘い、最上階で開く構成。極力建築が外部を強制的にフレーミングせず、移りゆく自然環境と日常行動での移動が、空間における住まい手の印象を絶えず変えてくれる、そんな家であってほしい。
- 場所
- 東京都世田谷区, 日本
- 年
- 2023