House Connected by Courtyard

東京都, 日本
写真 © 矢野紀行
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写真 © 伊藤徹也
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建築家
中佐昭夫/ ナフ・アーキテクト&デザイン
場所
東京都, 日本
2020

吹き抜け高さ3階分、広さ16畳のガラス張りの中庭を持つ住宅。部屋同士はその中庭を介してガラス越しで視覚的に接続していて、家族が互いの気配を立体的に感じられる構成だ。中庭には3階まで届く落葉の高木を低木や下草とともに設えてあり、雨を屋根で集めて灌水できるように4本の鎖樋を吊り下げている。レンガを敷き詰めた床面に10人ほど座れるテーブル・イスと、BBQグリル・キッチンが据えてあり、そこに空からの光が、吹き抜けのガラスに反射するライトチューブの仕組みで、葉影と共に落ちてくる。中庭は屋外だが、屋内と同色に揃えた階段や梁を掛けている。サッシュも目立たないように壁の色と揃えて、ガラスはできるだけ大きくしている。そうすることで中庭に対する屋内外の感覚的ギャップを減らし、実用的な生活の場として日常に溶け込ませられればと考えた。
敷地は整形で目黒区の住宅地にあり、面積は約200㎡で周囲に2〜3階建の隣家が立ち並んでいる。この条件に対し、建主は当初から中庭型の住宅を想定していた。敷地が狭い場合や不整形だと中庭をつくるのに制約を伴うが、確かに今回の条件ならば、無理なく中庭をつくれるのではないかと考えて設計を開始した。

建主の家族は外国籍を持つ夫妻と子供3人で、海外での生活が基準になっているためか、日本の一般的な寸法だと狭く感じてしまうとのことだった。設計の打ち合わせは、当時建主の家族が住んでいた、まさに日本の一般的な間取りの賃貸住宅で行われたが、サイズが大きめのテーブルやソファが並び、生活を楽しむための品々やストックがあちこちに置かれ、狭く感じるのも無理はない状況だった。

数カ国を転居した過程で所有物が増えてしまい、手元に置けないものはコンテナを借りて保管してあるが、本来はそこから新居に持ち込みたいものがあるとのこと。また、夫妻が同時に立てるキッチン、暖炉を備えたリビング、海外から祖父母が来たときに寛げるゲストルーム、妻が近所の友人を招いてヨガをするフリースペース、書斎、緑化、そして何より夫がBBQを心置きなく楽しめるようにすること、などが条件とのこと。こうなるとやはり相応の広さが必要になると感じた。

しかし一方で工事費を限度内に収める必要もある。したがって、中庭の周囲をぐるりと取り巻くドーナツ型の空洞ボリュームを高さ3階分仮定し、そこに必要な部屋を割り当てて埋めてゆく手順で設計を進めた。最終的には殆どが埋まったが、一部を埋めずに残したためにドーナツ型ではなくC型になった。埋まらなかった場所は1階が玄関ポーチ、2・3階はバルコニーであり、それを木製ルーバーとセットにして建物のファサードで縦一列に並べている。中庭はそこから前面道路へと、木製ルーバーの隙間から緩やかに気配が伝わる関係で接続している。

ファサードは前面道路境界から約2.5mセットバックさせてあり、塀を設けていないため、ちょっとした路肩のオープンスペースになっている。今回のように北側で接道している場合、敷地の奥になる南側で庭を確保しようとするため建物が北側に寄ってしまい、セットバックが生じにくいのが一般的だ(実際、付近の多くの住宅がセットバックしておらず、さらに塀を立てている)。しかし今回は建物の中心に庭を確保できているためそれに該当しないことと、なにより建主が前面道路に対する圧迫感をできるだけ減らしたいと望んでいたことが大きい。

新居での生活が始まってしばらくしてから、そのオープンスペースで、家族や友人を交えて新年の餅つきを計画していると建主から聞いた。そうしたことをきっかけに、中庭を介して、少しずつ家族と地域の関係が形成されてゆくならばと嬉しく思った。

-中佐昭夫-

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