北浦和VALLEY
埼玉, Japan
- Arquitectos
- 川辺直哉建築設計事務所
- Ano
- 2011
余白の価値
北浦和駅から7分ほど歩いた住宅地に建つ、14戸の集合住宅である。
この計画では、建築のボリューム操作によって生まれる空間を、住まい手が敷地の周辺状況と関わるための余白として扱い、集まって暮らし日々共有することで、周囲の街と緩やかに繋がるきっかけになればと考えた。
敷地は、南北のゆったりとした道路に2面接道していて、まわりには敷地にゆとりをもった住宅が多く、外からも庭や緑を感じることができる。
南側には道路を挟んで駐車場として使われている空地があり、北側は正面に道路が接続されている。東側アパートの共用廊下は向き合っていても生活感はなく、その隣の住宅の庭が豊かな緑を提供している。西側の住宅は近接しているが、敷地の一部が空地になっている。
このように、できる限り具体的に周辺状況を記述したうえで、ボリュームを操作した。東西の空地に対して開きながら、南北の道路をつなぐように、建物の一体性を保ちつつ分割する。隣接する住宅とのキョリを確保し、空地を敷地内に取り込むために外形を削ることによって、事業上の面積条件もクリアした。南北に抜ける共用部は2層分の高さがあるので、壁面に僅かな角度をつけることで周囲との関係が強められ、外部でも単なる通路でもない、この建築を特徴付ける場所になった。
こうしてつくられた余白としての共用部は、室内の領域を拡張すると共に、住戸同士を関係付ける路地のような役割も果たしている。
外壁は樹脂モルタルのスタイロ引き仕上げで、不均質で表情のある壁面は、経年変化を受け入れながら、周囲から突出することなくその存在を維持していくはずである。
賃貸集合住宅が、普遍的な街の資産として受け入れられるためには、建築が周囲の様々な状況を受け止めながら、住まい手の生活を緩やかに周囲と関係づける共用部を、意志のある余白として用意する必要があると考えている。また、その共用部に事業的な価値をどのように付加していくかが、これからの課題である。
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