T-room
鎌倉, Japan
【T-room】は反射を利用することでウラもオモテのように扱うことを心掛けたこのプロジェクトで、2002年に設計監理した鎌倉の実家の改装です。建物は某ハウスメーカーが約40年前に建てたもので、 私が大学在学時の約30年前に両親が中古で購入しました。既に一人暮らしをしていた兄と、大学に通う私の部屋が2階の陽当たりの良い南側に並んでいました。やがて私も就職を機に東京で一人暮らしをはじめたことで、nLDK住宅ではよく聞く話ですが、主の居ない2つの個室はいつしか物置と化していきました。
すると父が「あの2つの部屋を改装してくれないか?」と、まだ設計事務所勤めをはじめて2年程しか経たない私に依頼をしてくれました。 第二のリビング、書斎、時々帰省する私達兄弟が泊まるといったところが主な用途です。
住宅においてはデザインされることが少ない天井ですが、立位や背臥位においては視覚的に大きな範囲を占め、空間構成においてとても重要な要素のひとつです。そこでリビングから寝室のような役割を目的とした今回のプロジェクトにおいて、いつもはウラのような存在である天井を、形態、素材、照明を用いてオモテのように扱うことを試みました。 形態はフラットだった天井を屋根の勾配と合わせ、素材は万が一隙間から落ちてきても健康に影響が少ない羊毛が原料の断熱材を目の細かいステンレスメッシュで覆い、照明は梁とサイズを合わせたステンレス材を加工したコの字型に仕込んだアッパーライトで、断熱材を覆ったステンレスメッシュがレフ板の役割を果たすように照らしました。また屋根裏部屋の床の裏側に相当するフラットな部分には、ぼやけた反射が印象的なステンレス板の2B材をビス留めとしました。これらのステンレスの加工部材とテーブル脚の黒皮スチールは、偶然にも関係性を築け、密にやり取りが行える東京の町工場に分離発注をおこないました。
床板は幅が広く、長手方向においてはなるべく継ぎ目が少ないと空間がのびやかに感じられます。しかし幅広のフローリング材は通常高価です。当時別物件においてツーバイ材には2x4のサイズの他にも、もっと幅の広い2x10や2x12があることを知りました。そこで雇い実を用いて幅が広く且つ長さのある2x12材を加工して床材としました。長手方向を部屋幅いっぱいに敷き詰めてくれた大工さんには今でも頭が下がる思いです。
その他、補強梁のカバー、デスクやローテーブル、本棚の裏側やドアの手掛かりにステンレス板の2B材を用いることで、周囲の景色を取り込んだ柔らかい光の反復反射を計画しました。ツヤを抑えた白い塗装壁が、その反射をより際立たせてくれています。
- Architects
- 田邉雄之建築設計事務所
- Localització
- 鎌倉, Japan
- Any
- 2003
- 構造
- Low Fat Structure
- 施工
- イソダ