HU-TONG HOUSE
西日本, Japon
- Architectes
- 岸和郎 + ケイ・アソシエイツ
- Lieu
- 西日本, Japon
- Année
- 2002
中国の客家の住宅のひとつを訪ねたとき、その中庭を「街」streetや「巷」laneと呼んでいるのを見て驚いたことがある。中庭という空間は、外部とは切れたプライベートな空間だと思っていた。ところがそれに公共空間としての名前が付いていることに驚いたのだ。そこでようやく、客家の人たちにとって中庭とはパブリックな空間であることに気付いたのだ。
この住宅は日本の地方都市に行けばどこでも出会うような、住宅と商業が混在する地域に建っている。一方でクライアントが美術家であることもあり、住宅としてのプログラムは少々特殊な、アトリエを併設する住宅というものだった。
結果としてこの住宅は壁で囲われた敷地のなかにリビング・ダイニング棟、寝室棟、そしてアトリエ棟の三つのパヴィリオンが建つという、客家の住宅か、あるいはバリ島の住宅のような平面を持つものになった。
敷地角から始まるアプローチは平屋のリビング・ダイニング棟と寝室棟の間のテラスへと繋がり、さらに二階建てのアトリエ棟の前の露地のような空間へ、さらに和室の下の裏口へと、外部空間の連鎖として続いていく。
廊下やホールといったものを持たないこの住宅では、三つのパヴィリオンを結ぶこの外部空間が、この住宅のすべてのアクティビティのための舞台となる。それはもはや中庭と呼ばれるような、静かで安定した空間ではなく、さながら客家の「街」や「巷」か、あるいは中国の胡同Hu-tong のような露地の空間、さながら小さな都市空間のような様相を見せている。住宅の内部にパブリックな空間としての外部空間を導入するという、どこか矛盾した形式を試行することで、アジアの住宅のプロトタイプについて考えてみたいと思っていた。
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