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- 2017
松本城と松本平を眼下に、その向こうには美しい山々の稜線を臨む場所に母の家を設計した。自身も幼少期を過ごした故郷・松本に想いを馳せながら設計した。 空の色、雲の流れ、山の表情、自然の移ろいは壁の切り抜き方に依って、いつまでも新鮮な発見に満ちて眺めることができる。勝手自由に開けているように見えるランダムな開口部は、様々な大小、奥行、仕上、形状、高さで配置することにより、歩き、座る際に、多様なシークエンスを日々楽しめるように考えた窓群である。景色をより強く切り取るために設えたフジツボ窓は、外観を印象的なものとすると同時に、内部の陰影ボリュームをあげる装置として設えている。敷地はくの字に曲がった平面をしており、家のどこからでも松本平を臨むことができる。道路側はプライバシー確保のため閉じたが、反面、景観側は多くの開口を擁する完全片側採光の住宅である。それにより、光のコントラストが強調され、窓配置に加え、より陰翳の強い空間構成となった。また、ピアニストのための音楽堂も離れとして設えた。木構造現しのミニマルな室内は蕪束を採用し、松本らしい伝統的なデザインでありながら、屋根に様々な傾斜を加えることで、稀有な空間にしたいと考えた。自由奔放かつ大胆な内部構成を持たせることができたと思う。