写真 © Yoshiharu Matsumura
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楓のある家

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場所
箕面市, 日本
2007

敷地は箕面の滝への玄関口でもある阪急箕面線箕面駅から徒歩五分程。しかし山の斜面に位置するこの辺りにはその便利さとは無縁の様な静かな住宅街が広がっており、坂を少し上がるとうっそうとした森に囲まれ静けさを堪えた稲荷がある。
敷地に元々在った10mの見事な楓の木、敷地の印象全てをつくり出しているこの木に素直に従うこと、それがこの家のコンセプトとなっており、その為の明快なプランを目指した。
建物の外観は一階の寝室等の個室郡から成る白いボックス、そしてその上にLDKから成るコールテン鋼の錆色のボリュームが乗る形で構成されている。上下のボックスは互いにずれて配置されたおり、それによってできた隙間をアプローチが走り、トンネル状の薄暗い視界は明るい楓の木の足元まで一直線に抜ける。アプローチの中間にはエントランスが在り、来訪者は建物の最深部である懐より内部へと進入する。
入口正面には一段レベルの上がった吹き抜けが出迎え、光と共に心を上へ上へと誘う。吹抜を二階へ上がると同時に視界は一気に外部まで抜け、西には一階から伸びた爽やかな楓の葉、力強い幹が二階とは思えぬほどのスケールで風景一杯に溢れる。床の大理石にはその楓が映り込み、風景を更に膨らませてくれる。天井と床との間、水平方向に間仕切り等の遮るものが何も無い二階の居住空間は外部から内部、そしてまた外部へと滞ること無く連続し、どこからでも溢れんばかりの楓を感じることが出来る。ガラスを除けばただ屋根の下である、と言うことだけがそこが内部であることを規定しているかの様である。二階の周囲にはぐるりとデッキが廻されており、そのデッキが干渉帯となることで居住空間は外部に対して剥き出しとなることなく安心感とのバランスを保っている。開放的な二階に対し、一階には建物の南側に寄り添う通り庭に対してのみ開けた寝室郡が並ぶ。通り庭には透明な浴室のボックスがせり出しており、露天風呂の様相を呈している。
重層する二つの階層に異なる性質を持たせることによって、全体としてのバランスを図っている。建築の「かたち」によって主張するのではなく、既にそこにあるものに対峙せず、素直に寄り添うことによって本当に大切なものが自然と浮き上がり、豊かな空間というものは育まれて行くのではないだろうか。

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