写真 © Kenta Hasegawa
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銀座のクリニック

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場所
東京都中央区, 日本
2019

銀座の雑居ビルに入る循環器系・消化器系内科のクリニックの内装である。1フロア100m2強の建物は間口が狭く奥行が深い、いわゆる鰻の寝床である。避難動線を確保しながら必要な諸室を並べてしまえば自動的にプランニングは決定してしまう。10m2に満たない閉鎖的な室が並ぶのはあまりにも不健康な状況である。建物の奥にいても窓の外を感じらるようにしたい。だから梁下に天井を貼らないでなるべく高さを確保して、間仕切りをガラスのスクリーンとしている。

と、こう書いてしまえばなんてこともないのだが、医療系用途は非常に「かたい」用途である。医療法を考慮しなければならないし、レントゲン室などの特殊な室や医療機器に対する配慮も必要だ。そして、何よりも人々(医療従事者も、患者も)が期待する医療施設像は極めて保守的であり、天井を張らないことやガラスで間仕切ることには大きな抵抗がある。でもその抵抗は共同幻想ともいえるクリシェみたいなもので、よくよく話を聞いてみると明確な理由がなさそうだ。たとえばガラスの壁は傷付きにくいし、薬品にも強い。指紋は目立つけれどそれは汚れなのだから、拭けばむしろ衛生を保てる。診察室の音と視線の問題は天井から分厚めのレースのカーテンを重ねることで、運用上の支障はない。上階のスラブ下にグラスウールのマットを貼り、梁に設備配管の保温材を巻いて吸音しているので、音環境も悪くはない。そして何よりも奥の診察室にいても窓の外に銀座の風景が見えて開放的なのである。

関係者は竣工する前には不安そうにしていたけれど、開業してしまえばなんてこともない。とりわけ「かたい」用途ではありがちなことかもしれないけれど、1つ1つ丁寧に解していけば、クリシェを超えた違う風景を描ける可能性があるものだ。

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