トイレの家

香川県観音寺市伊吹島, 日本
内路地を見る。時刻、季節により、光と影のバランスが変わり、雰囲気が大きく変わる。午後少し回った頃の様子。
写真 © フューチャースケープ建築設計事務所
トイレの家の朝の全景。斜面に広がる集落が背後に見える。島を訪れた観光客が、急坂を上って一息をつく地点に立っている。
写真 © フューチャースケープ建築設計事務所
建築の上に、島の時間と空間に関わる11本の光のスリットが重なっている。
図面 © フューチャースケープ建築設計事務所
トイレの家のコンセプトのダイアグラム。時間と空間の上でのローカリゼーション、および、さまざまな島のランドスケープの反映を示す。
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南側立面。サンパウロに向かう光のスリットが、建物の内部、路地を通って、反対側に抜けて行るのが見える。
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東側外観。斜めの壁の奥は、休憩スペースの茶堂。茶堂は、ひのきの板を敷き、靴を脱ぎ、腰を掛けられるようになっている。
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トイレの家の屋根勾配は、伊吹島の伝統的民家の屋根勾配に合わせており、隣家とほぼ同じ勾配であるのが見える。
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(左)内路地を見る。3棟に分かれた建物の間の路地は、迷路のような島の路地につながる。(右)光のスリットの詳細。
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内路地を見る。朝。
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内路地を見る。冬の夕方。
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内路地を見る。右手は、女性用洗面所。正面は、休憩スペースの茶堂。
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内路地の壁面に、島の風景や光が映り込む。
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女性用トイレの洗面所を見る。光のスリットが交差し、時刻に応じて、内部の光の様子も移ろう。
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女性用トイレの洗面所を見る。外壁の光のスリットの向こうに、外の風景が見える。洗面台は、耐久性に配慮し、コンクリート製。
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女性用トイレの洗面所を見る。光のスリットが交差している。光のスリットは、FRP防水と一体になったFRP板を入れている。
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男性用トイレを見る。天井の光のスリットから光が落ちる。小便器は、壁面のスリットから見えないように配置。
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男性用トイレを見る。壁を天井の光のスリットから落ちる光が、室内に差し込む。
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男性用トイレと内路地を見る。
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(左)女性用トイレ大便器ブースを見る。天井開口部から光が注ぎ、空気が通り抜けて行く。(右)女性用トイレ大便器ブースの天井開口部では、春から秋までの午後を少し回った時間に、ハートの形が出現する。
写真 © フューチャースケープ建築設計事務所
女性用トイレ大便器ブースを見る。ブースはかなり広く、雨の際も用を足すには影響を受けない。床の砂利下には、雨を拾う排水孔、
写真 © フューチャースケープ建築設計事務所
女性用トイレ大便器ブースの天井開口部を見上げる。
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光がどのようにスリットを通るか示す模型
写真 © フューチャースケープ建築設計事務所
建築家
石井大五+フューチャースケープ 建築設計事務所
場所
香川県観音寺市伊吹島, 日本
2013
クライエント
Kanonji city, 観音寺市
構造設計
匠設計
設備設計
明野設備研究所
建設
伊井工務店
木材の3Dプレカット
三王ハウジング
特殊防水
ハマネツ

瀬戸内海の離島の伊吹島につくられた公衆トイレ。瀬戸内国際芸術祭2013の参加作品としてつくられました。

「周縁/中心」
伊吹島の伝統的民家では、トイレは、大抵、母屋から分かれた離れの水屋に置かれています。伊吹島では、水屋は、家からはじかれた、周縁の空間です。

その母屋と水屋の関係は、どこか、四国本島と伊吹島、大都市と僻地の関係に似ています。

今、伊吹島は、観音寺からの定期船で、本土とつながるだけで、四国の、そして、日本の周縁となっています。
しかし、遡れば、江戸時代、上方と船で直接つながり、上方の流行もすぐに来る場所であり、その頃の名残で、古い京言葉が、日本で唯一、今も残っています。かつては、自立した小さな中心だったのです。

トイレの家は、周縁だった空間を島の中心に変え、周縁となった伊吹島に強さを与えようとしました。

「島を、時間と空間の上で定位する」
時間と空間に関わる11本の光のスリットを重ねました。

11本のうち5本は、時間に関わる光のスリットです。島の伝統的行事「島四国(旧暦3月21日)」「夏祭り(港祭り)(7月15日)」「秋祭り(ちょうさ)(10月1日)」そして、夏至と冬至の日の午前9時の太陽方位に合わせて、建築の中をスリットが通り抜けます。年に1回、その時刻「に、建築の中を一筋の光が通り、島民に、季節の訪れを知らせます。時間の上での島のアイデンティティー、そして、時間の上での島の座標を示す仕掛けです。

11本のうち6本は、空間に関わる光のスリットです。伊吹島から世界の6大陸の主要都市(東京、ロンドン、ナイロビ、ニューヨーク、サンパウロ、シドニー)の方向を示します。

この6つの角度の軸が交差する点は、伊吹島の空間の上での位置を示す座標であり、つねに、中心が伊吹島となります。世界とのつながりや、一人一人が中心であることを意識し、かつての伊吹島の矜持を取り戻してほしい、と考えました。

「島の景観とのつながり」
その上に、さまざまな島のランドスケープを重ねました。ただ、そのままを重ねるのではなく、微妙なずれを潜ませることで、そのずれから、島を意識してもらおうと考えました。

屋根は、民家の屋根勾配に揃え、外壁の色は、島の民家の色彩調査に基づいています。圧倒的に多い第1群ではなく、それに次ぐ第2群の色で仕上げ、景観とつながりながら、違和感がない程度に自立した状態をつくりました。

光のスリットで、3棟に分かれ、その間に生まれた路地は、迷路のような伊吹島の路地につながります。

路地や洗面所の外壁は、この島に多い、焼き杉の外壁がモチーフですが、表面に風景を映すポリカ波板を重ね、少しだけ違えています。

室内最奥の大便器ブースに進むと、屋根に大きな開口部が空いています。光や雨が室内に落ちますが、床の砂利下に、排水孔を設け、壁や天井は屋外仕様でつくっています。

水に恵まれない伊吹島では、水道の開通した30年前まで、雨水が、島民の生活を支えていました。トイレの家の開口部は、雨水を貯めるために地中に掘った井戸を、底から見上げた形です。水を使うトイレという施設のいちばん奥で、島の水を巡る物語とつながって行きます。

観光客には、島の風景が見えやすくなり、島民には、島らしさを、今一度、思い出させる場所となります。

https://www.future-scape.co.jp/g200303works/g200303worksimage/g9903o08houseoftoilet/g9903o08houseoftoilet.html

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